インフルエンザウイルスに関するニュース

11月25日、26日に相次いでインフルエンザウイルスに関するニュースがありました。

【米で豚由来の新型インフル…人から人の可能性】
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111124-OYT1T00432.htm


インフルエンザウイルスのA型は、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)というタンパク質が感染に必須です。
現在、A型インフルエンザにおいては、大規模な変異によってヘマグルチニンはHA1〜HA16の16種類、ノイラミニダーゼはNA1〜NA9の9種類が見つかっており、これらの組み合わせにより144種類の亜型に分類されます。


これらの中で、ヒトのインフルエンザの原因になることが明らかになっているのは、「Aソ連型」として知られているH1N1、「A香港型」として知られているH3N2、H1N2、H2N2です。高病原性鳥インフルエンザとして知られるようになったタイプはH5N1であり、ヒトからヒトへの感染拡大が危惧されています。


また、同じH1N1であってもさらに細かな変異によって抗原性や宿主が異なり、年によって流行するウイルスのタイプは異なります。

2年前に出現した新型はこのH1N1タイプの細かな変異が起こったものです。


新聞記事によると、今回見つかったウイルスは、豚由来とみられるH3N2ですが、2年前流行があった新型インフルエンザ(H1N1)の遺伝子が含まれていたことから、異なるタイプのウイルスの遺伝子が、豚の体内で混ざって入れ替わる「再集合」が起きたとみられるとともに、新型がヒトからヒトに移った可能性が示唆されたというものです。




【石油から「リレンザ」合成…安価な大量生産に道】
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111126-OYT1T00493.htm

一方、こちらの記事はA型インフルエンザの治療薬であるリレンザを石油から安価に生成できる「ニトロブテン」と呼ばれる化学物質から合成することに成功したというものです。


A型インフルエンザウイルスは、鳥やヒトに感染する際、粘膜の受容体に結合すること、また細胞から放出される際、この受容体分子を破壊することが必須となります。これらにHAやNAが関与します。

受容体に関しては、鳥の受容体とヒトの受容体は微妙に異なることが知られています。




シアリダーゼ(=ノイラミニダーゼ)は、二糖を分解します。α2-3タイプの構造を示しました。


リレンザは、受容体を構成するシアル酸類似物質でノイラミダーゼ(NA)阻害薬です。新聞記事によれば、これまでは天然のシアル酸を利用していたようなので、化学合成できたことで、大量に、また変異などにもすぐに対応できるようになるとのことです。



新型ウイルスを出現させないための取り組みは必要であり、あるいは仮に出現したとしても、社会が協働することで封じ込むことが必要ではないかと思います。
その意味で、動物生産現場での対応は重要となるはずです。
私たちの学科の学生の進路は食糧生産現場から加工・流通・小売まで広い領域にかかわっています。
社会における協働を考えた場合、私たちの学科でも感染症の知識・対策を理解させることは重要であると考えています。





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